*  公共工事の談合〜特効薬は「発注者のエンジニアリング *

 ***   消防無線談合事案詳細分析に基づく提言   ***

 官公庁発注に係る直近の大きな談合事案である「消防無線談合」の手口を詳細に分析しました。手口そのものは、詳細な施工図面から成る「工事仕様書」の記述内容を巧みに悪用している点で、特に目新しいものではありません。しかし、発注者である全国の各自治体では、外部委託で作成した「工事仕様書」にこのような談合手口が潜んでいようとは、どこも全く気付きませんでした。また、消防無線談合を教訓として、発注方法を見直そうとした自治体も、全くありませんでした。これでは、全国の自治体に「談合の餌食になり易い発注体質」が温存されたままです。この先も、詳細な施工図面から成る「工事仕様書」による、従前通りの公共工事の発注が全国的に継続する趨勢ですが、このままでは、同様手口による談合が分野を替えて繰り返されることでしょう。

 そこで、なかなか払拭できない「公共工事の談合」に対して、価格と技術の両面での競争原理を確実に働かせる方法などの、真に実効性のある「発注者のエンジニアリング」のツボを押さえたコンサルティングにより、官公庁を「談合の餌食になり難い発注体質」に劇的に改善できることをお話し致します。

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*** 消防無線談合事案 ***

〜 誰も知らないまま闇に葬られそうな3つの大問題 〜

そもそも消防無線談合とは?

 消防隊員や救急隊員の活動を支える消防無線は、旧式のアナログ方式から最新のデジタル方式に更新するために、全国の自治体で合計516件の整備工事が総額2700億円で発注され、平成28年5月までに全て完了しました。ところが、この516件中の過半数で無線機器の製造を受注したのは、談合により予め決められた業者でした。

 平成29年2月に公正取引委員会は、消防無線談合に関与したとして国内大手無線機器製造業者5社に、排除措置と総額63億円の課徴金納付を命じました。

 

闇に葬られそうな大問題その1

 消防無線談合の手口そのものは、詳細な施工図面から成る「工事仕様書」の記述内容を巧みに悪用している点で、特に目新しいものではありません。しかし、発注者である全国の各自治体では、外部委託で作成した「工事仕様書」にこのような談合手口が潜んでいようとは、どこも全く気付きませんでした。また、消防無線談合を教訓として、発注方法を見直そうとした自治体も、全くありませんでした。これでは、全国の自治体に、「談合の餌食になり易い発注体質」が温存されたままです。この先も、詳細な施工図面から成る「工事仕様書」による、従前通りの公共工事の発注が全国的に継続する趨勢ですが、このままでは、同様手口による談合が分野を替えて繰り返されることでしょう。

 

闇に葬られそうな大問題その2

 談合した消防無線機器製造業者5社は、無線機器を製造する上で、総務省消防庁の外郭団体が作成した「消防無線スペックの統一規格を定めた共通仕様書」を満たしさえすればよく、これには最先端の技術開発は殆ど必要ありませんでした。談合で同業他社と競い合う必要も無くなったため、「言い値」で売ることができたし、無線機器の小型化・軽量化・省電力化・操作性の向上等に向けたインセンティブも働きませんでした。つまり、談合の結果、価格面及び技術面の両面で、競争原理が完全に阻害されたのです。今となってはタラレバですが、全国の各自治体で、価格と技術の両面での競争原理を確実に働かせた発注を行っていれば、2700億円の半分程度で、より使い勝手に優れた消防救急デジタル無線システムが全国に整備できていたのではないでしょうか。

 

闇に葬られそうな大問題その3

 消防無線談合は、消防無線機器の製造業者5社による談合です。しかし、全国の各自治体が総額2700億円で「消防救急無線デジタル化整備工事」を発注した先は、談合した製造業者にではなく、殆どが建設業者(電気通信設備の工事業者)でした。これが一種の壁となり、公正取引委員会による談合認定が確定した後も、工事契約した相手は建設業者であって製造業者ではないからという理由で、談合の被害を被った自治体の大半が、談合した製造業者に対する損害賠償請求に踏み切れないままです。

 

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 * 我が国の公共工事発注方法は、悪しきガラパゴス *

 我が国の公共工事の発注方法は、世界に類を見ない「異様なガラパゴス」です。

 

 「設計と施工の分離の大原則」を、妙にガチガチに非常識なほどに変な方向に徹底し過ぎています。この結果、「工事仕様書」の詳細な施工図面に基づく詳細な積算による「非常に厳格な予定価格(←これの漏洩は談合に繋がります。つまり、公共工事発注上の諸問題の元凶は、このようなところにあると言えます。)」を策定することが、我が国の公共工事発注事務の中心になっており、また、会計検査院による会計検査の中心にもなっています。この「非常に厳格な予定価格」なるものを、発注に先立ってガチガチに策定しているのは我が国だけです。

 

 ところが、このような発注方法の踏襲が、数々の談合の温床となったばかりか、新国立競技場建設計画の白紙撤回(国際コンペ選定作品と60億円あまりの設計委託費と2年半もの歳月を、徒らにドブに捨てたのも同然です。)や、豊洲新市場建設問題(発注の元締めである中央卸売市場長が知らない内に市場棟地下には空洞が設計・施工され、また、市場棟建設費用が当初予定の数倍になりました。)を引き起こした元凶にもなっています。

 

 海外の公共工事の発注方法は、我が国に比べれば、遥かに柔軟で合理的です。このため、前記のような談合、新国立競技場建設計画の白紙撤回、豊洲新市場建設問題を引き起こすことは、海外ではまず考えられません。このような問題を立て続けに起こしておきながら、発注者側の積算による「非常に厳格な予定価格」のガチガチの策定にばかり、血道を上げて拘り続けているのは我が国だけです。もう、いい加減にしてくれ、と言いたいところです。

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 ***  我が国の公共工事発注方法が

    悪しきガラパゴスに至った経緯  ***

 まずは、公共工事の実施形態の変化についてご説明致します。公共工事は、戦前は内務省、鉄道省及び農林省が、民間企業に発注するのではなく、調査・設計・施工を直営でやっていました。直営ということは、官庁内部の技官が自ら、道路や橋、公共建築物等の設計をして、つまり、詳細な施工図面を作成して、次に前記図面に依り詳細な積算を行い、その積算結果に基づき、予算を確保するとともに工事材料と人夫を調達して施工していました。

 

戦後は、公共工事の施工を外部委託するようになり、次いで、設計も外部委託するようになりました。ここで、面白いことが起きました。昭和34年1月に発出された建設事務次官通達「土木事業に係わる設計業務等を委託する場合の契約方式等について」の中で、戦前は、官庁自らが設計・施工一括実施していたにもかかわらず、「原則として、設計業務を行う者に施工を行わせてはならない。」という、「設計・施工分離の原則」が打ち出されたのです。この原則は、当時としては至極真っ当なものでした。何故ならば、戦前は、民間企業には公共工事を担う技術力が乏しく、戦後も昭和30年代頃までは、そうした技術力は民間企業よりも官庁の方が上だったからです。公共工事は、鉄筋・鉄骨・コンクリートが中心の工事です。そこで仮に、技術力が官庁ほども高くはない民間企業に設計・施工一括で公共工事を発注した場合には、十数年前に大きな社会問題となった「姉歯問題」のような事態が懸念されました。何故ならば、官庁が求めた通りに出来上がっているのか否か、例えば、鉄筋の本数やコンクリートの品質などについて、官庁が求めた通りに施工されたのか、完成検査段階ではもはや確認の術が無いからです。このことから、「設計・施工分離の原則」に基づき設計を外部委託した場合でも、設計結果の審査と委託成果物(施工図面)に基づく詳細な積算による予定価格の策定は、昭和30年代当時の官庁内部の技官の最も大事な仕事となっていました。しかし、戦後も時が経つにつれて民間企業の技術力が向上し、今日では、最先端の高度な技術力は民間企業が有しています。つまり、公共工事を担う技術力の高低を比べてみれば、随分前から、官庁と民間企業では完全に逆転してしまっているのです。ところが、「官の無謬性」に基づく前例踏襲により、今日でも、外部委託した設計結果の審査と委託成果物(施工図面)に基づく詳細な積算による予定価格の策定は、昭和30年代と同様に、官庁内部の技官の最も大事な仕事であり続けているのです。

 

さて、「設計・施工分離の原則」は、土木のみならず建築や製造請負にも広く波及しました。旧建設省では、土木が主流で建築は傍流であり、電気設備や機械設備の製造請負は建築附帯工事であったためです。その結果の必然として、「詳細設計に基づく施工図面中心の工事仕様書」一色となり、いわゆる性能仕様書は影を潜めてしまいました。こうした経緯から、我が国の常識である「設計・施工分離の原則」は、法律・政令・省令に根拠を見出せるものではありません。施工図面に基づく詳細な積算による「非常に厳格な予定価格」の策定についても、また然りです。これ程までに「設計・施工分離の原則」に固執しているのは我が国だけであって、諸外国では設計・施工の一括発注は当たり前です。加えて、詳細な積算に基づく「非常に厳格な予定価格」を策定している国など、我が国の他にはありません。

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***  性能仕様書の優れたメリット  ***

1 性能仕様書とは?

 性能仕様書は、発注者が受注者に実現を求める「性能要件」と「機能要件」を、分かりやすい文言で規定した仕様書です。実現を求める目標そのものを規定した仕様書と言えます。

 このため、設計図面や施工図面により、目標を実現するための手段や方法を具体的かつ詳細に規定する「いわゆる特記仕様書」とは、別次元と言えるほどに「仕様」の捉え方や作成方法が異なっています。

 ここで、性能仕様書における「機能要件」とは、「有るか無いか」として規定される要件です。また、性能仕様書における「性能要件」とは、「どれ位」あるいは「どの程度」として規定される要件です。

 

2 性能仕様書は、発注者が作成できます!

 性能仕様書は、実現目標について、文言により分かりやすく必要十分に明示するところに最大の特徴があります。このため、性能仕様書は、CADの使用方法や積算基準に基づく積算方法に精通していなくても、発注者自らが短期間で効率的に作成できます。

 このような特徴から、大災害発生時の混乱した状況下であっても、性能仕様書を用いれば、公共施設の修復に向けた発注業務を迅速・的確に遂行できるようになります。

 

3 性能仕様書は、設計・製造・施工の一括発注には必須です!

 性能仕様書による発注では、詳細な設計図面や施工図面の作成は受注者が行い、発注者の承認を得た上で製造・施工します。このため、性能仕様書は、PFIやPPPによる公共事業など、設計・製造・施工を一括発注する場合に最適であるとともに、絶対に欠かせないものです。

 

4 性能仕様書は、受発注上の責任の所在を明確化できます!

 性能仕様書は、発注者が実現を求める「性能要件」と「機能要件」を、受注者が設計・製造・施工するために必要十分な「条件」として示すものです。このため、受発注者間における責任の所在が明確化できます。例えば、受注者が実施した設計の変更に伴う契約金額の変更など、原則としてあり得ません。

 

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***  八王子市清掃工場の1社応札  ***

 自治体が発注する清掃プラントは、20年ほど前に全国的な談合が摘発され、課徴金や自治体への賠償金はそれぞれ数百億円に上りました。

 

 最近の発注例ですが、PFI・DBO方式による八王子市の新清掃工場整備運営事業の総合評価方式一般競争入札は、1社応札に終わりました。これでは、総合評価方式は全く機能せず、価格と技術の両面で競争原理は完全に阻害されています。また、設計・製造・施工・運営を一括して発注するための要求水準書(←性能仕様書と同義です。)200ページ以上もありましたので、1社応札に終わったことと併せて考えれば、消防無線談合と同じ手口でのテリトリー分けの恐れを払拭できません。

 

 消防無線談合では、工事仕様書の中の業者準備品について、寸法・重量・消費電流などを具体的な数値で規定したことが、特定業者を「発注者が暗に指定」したような結果になりました。仕様書で「暗に指定」された製造業者に係る工事業者だけが応札した自治体も少なくありませんでした。

 

 昨年度に浜松市は、新清掃工場整備運営事業をPFI・BTO方式で、つまり、八王子市と同じく要求水準書(つまり、性能仕様書)で、設計・製造・施工・運営を一括発注しました。この際に用いた要求水準書(性能仕様書)をネットから入手しましたが、八王子市と同じく、200ページ近くありました。その記載内容を具に調べましたが、要求水準書(性能仕様書)というよりも、従前の工事仕様書の施工図面の内容を言葉に置き換えているに過ぎないものでした。このような性能仕様書もどきでは、特定業者を「発注者が暗に指定」しかねない具体的な数値等が、自ずと盛り込まれてしまいます。

 

 「機能要件」と「性能要件」に純化した正真正銘の性能仕様書であれば、談合の温床には絶対になり得ないところです。しかし、施工図面の内容を言葉に置き換えたということは、受託業者に全て委ねるべき「設計」に立ち入ってしまったということです。それゆえ、ページ数が膨大になるとともに、談合の温床を払拭することなど、叶う筈もありません。

    

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