公共建築物の木造化の促進に向けた

性能発注方式の導入 

  「木の総合文化(ウッドレガシー)を推進する議員連盟」への「一般社団法人 木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会」からの要望書に、「公共建築物の木造化の促進に向けた性能発注方式の導入」が盛り込まれました。

 また、2021年12月21日(火)の16:00〜17:30に、衆議院第一議員会館 地下1階大会議室において、議員連盟の先生方や関係省庁幹部の方々への、第5回(一社)木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会 要望活動発表会が開催され、「公共建築物の木造化の促進に向けた性能発注方式の導入」についての口頭発表の機会を得ることができました。

 「公共建築物の木造化の促進に向けた性能発注の導入」の全文は、下記のとおりです。

 

 

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                             澤田雅之技術士事務所

 

公共建築物の木造化の促進に向けた性能発注方式の導入

 

 2019年11月に完成した新国立競技場は、大量の木材を屋根や庇などに用いています。完成までの紆余曲折を振り返ってみますと、2012年の国際デザインコンクールを起点とする当初の新国立競技場整備計画では、木材の利用についての特段のインセンティブはありませんでした。また、この整備計画を「仕様発注方式」で推進した結果、予定工事費の高騰を招いて、60億円あまりの設計委託費と2年半もの設計期間を全てドブに捨てる形で、2015年7月に整備計画の全てが白紙撤回されました。

 驚くべきことにこの直後から、実に見事なリカバリがなされます。つまり、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(2014年6月改正)」に基づき、2015年8月(白紙撤回の翌月)に、新たな新国立競技場整備計画が「性能発注方式」で立案されたのです。そして、この整備計画を遂行した結果、当初予定した工期と工事費の範囲内で、しかも、大量の木材の利用を実現した上で、何の滞りも無く新国立競技場は完成しました。「仕様発注方式」による失敗・破綻を、「性能発注方式」で復活・成功させた見事な事例です。また、「仕様発注方式」では一筋縄ではいかない「大量の木材の利用」について、「性能発注方式」で成功させた見事な事例です。

 「大量の木材の利用」を含めて新国立競技場整備事業を成功に導いた最大の要因は、「性能発注方式」の基盤となる理想的な「業務要求水準書」を短期間に作成したことです。つまり、受注者に実現を求める新国立競技場の「機能要件と性能要件」について、受注者に委ねるべき設計には立ち入ることなく、かつ、受注者が設計と施工を行う上で必要十分となるように記載した「業務要求水準書」を、発注者である独立行政法人日本スポーツ振興センターが作成したことです。この「業務要求水準書」では、「木材の利用」については「第2章の第4節の1.の(15)項」において、『「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」の趣旨に則り、木材利用の促進を図り、製材、CLT等の集成材、合板等の木材を可能な限り利用する計画とする。』との規定があるのみです。この規定を受けて、設計と施工を一括して請け負った受注者が、その保有する最先端技術を存分に活かし創意工夫を凝らした結果として、大量の木材を屋根や庇などに利用した新国立競技場が実現したのです。

 このことから、規模の大小を問わず、公共建築物の木造化を促進するには、新国立競技場をモデルとした「性能発注方式」の導入が何よりも望まれるところです。

 

 【注】

 公共建築物の発注方式には、我が国独自で他国に類を見ない「仕様発注方式」と、他国や我が国の民間部門では当たり前といえる「性能発注方式」があります。「仕様発注方式」とは、設計と施工を分離発注する方式で、「この設計図面どおりに施工してくれ。」というものです。他方、「性能発注方式」とは、設計と施工を一括発注する方式で、「このようなものを設計して施工してくれ。」というものです。

 昭和34年に発出された建設事務次官通達を端緒とする我が国独自の「仕様発注方式」は、官公庁の技術力が圧倒的に上であった当時は正に理に叶った発注方式でした。しかし、平成の世になった頃に官公庁と民間の技術力は逆転し、今日では最先端の技術力は民間が保有しています。このため、昔ながらの「仕様発注方式」では、民間企業の創意工夫や最先端技術を活かせるはずもなく、木造化に向けたイノベーションなど全く期待できません。ところが、前例踏襲の習いにより、「公設公営」の公共工事では、今日でもそのほとんどが「仕様発注方式」です。他方、PFI法に基づく「公設民営」や「民設民営」の公共工事では、設計と施工と運営の一括発注となるため、その全てが「性能発注方式」です。

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