* * * “性能発注”のお薦め * * *

〜 公共工事発注上の諸問題全てを解決する鍵 〜

 

【国土交通省にご説明】

 

 

自由民主党衆議院議員 薗浦健太郎先生の第一秘書の佐藤尚志様のご尽力により、2019年12月3日、国土交通省の土地・建設産業局 建設業課 入札制度企画指導室と大臣官房 技術調査課 建設技術調整室に対して、文部科学省認可技術士協同組合 公共工事発注問題研究会の藤田泰正 技術士(機械部門・総合技術監理部門)と共に、【“性能発注”のお薦め 〜 公共工事発注上の諸問題全てを解決する鍵】に基づき、ご説明致しました。

         

*** 性能発注のお薦め ***

◯ 公共工事の“仕様発注”が我が国に根付いた昭和30年代は、工事を担う民間企業も育ちつつありましたが、官庁の技術力は何と言っても圧倒的でした。このため、「設計・施工の分離の原則」に則って“仕様発注”すること、つまり、官の発注者から民の受注者に対して「この図面どおりに施工せよ」と指図することは、実に理に叶っていました。

 

◯ それから半世紀を経る間に、民間企業の技術力がどんどん向上し、今日では、高度な最先端技術は民間企業が有しています。つまり、公共工事を担う技術力が、この半世紀の間に、官庁と民間企業とで完全に逆転してしまっています。としますと、「設計・施工の分離の原則」に則った“仕様発注”は、今日ではあたかも、技術力の低い者が技術力の高い者に向かって「この通りやれ」と指図しているような、とんでもないおこがましい状況になっています。これでは、民間企業の創意工夫や高度な最先端技術を、上手く活かせません。

 

◯ そこで、“性能発注”の出番です。“性能発注”では、「この図面どおりに施工せよ」ではなく、「このようなものを設計し施工してくれ」となります。つまり、設計・施工の一括発注ですから、民間企業の創意工夫や高度な最先端技術を、存分に活かすことができます。また、“仕様発注”では、詳細な施工図面の作成や詳細な積算に大変な時間と労力を要しますが、“性能発注”では、発注者が実現を求めるもの(究極の目標)をわかりやすい言葉で、受注者が設計・施工する上で必要十分となるように書き連ねれば良いため、発注業務負担は確実に大幅に低減します。

** 公共工事を “性能発注” で行うメリット ** 

公共工事を“性能発注方式”で行えば、これまでの“仕様発注方式”では解決が困難であった発注上の諸問題が全て解決できます。具体的には下記のとおりです。

 

◯ “性能発注”では、「価格」と「技術」の両面で競争原理が働くので、「談合の温床」を払拭できます。

 

◯ “性能発注”では、「価格」と「技術」の両面で競争原理を働かせて、「費用対効果」を最大化できます。

 

◯ “性能発注”では、互いにトレードオフの関係にあるスペック・工事費・工期の「全体最適化」が容易に実現できます。

 

◯ “性能発注”では、受注者側の創意工夫や最先端技術を存分に活かすことができます。

 

◯ “性能発注”では、公共工事の意義・目的が、市民目線でわかりやすくなります。

 

◯ “性能発注”では、公共工事の意義・目的を十分に理解した上で発注を決裁することができます。

 

◯ “性能発注”では、発注者と受注者の間における「責任の所在」が明確になります。

 

◯ “性能発注”では、「設計変更に伴う契約金額の変更」は生じません。

 

◯ “性能発注”では、「工期等で受注者に無理を強いる事態」は生じません。

 

◯ “性能発注”では、設計発注事務手続きと施工発注事務手続きが一本化するため、全体の工期を短縮できます。

 

◯ “性能発注”では、道路補修工事や水道配水管更新工事など、同種の工事を繰り返して実施する場合の発注事務負担を劇的に低減できます。

 

◯ “性能発注”では、発注事務担当者がCADの使い方に精通する必要や、緻密な積算手法に精通する必要は無くなります。

 

◯ “性能発注”では、発注事務担当者が「ニーズとシーズのベストマッチング」を追求することになるので、仕事としてのやり甲斐があります。ここで、現場における課題がニーズであり、課題を解決するための技術や手法がシーズであり、期待される効果を予見して解決策を企画・立案することがベストマッチングです。    

*** 新国立競技場が当初計画通りに11月30日完成 ***

仕様発注による失敗・破綻を性能発注で復活・成功

【“仕様発注”による失敗・破綻】

 

2012年の国際デザインコンクールに基づく新国立競技場建設計画は、「設計・施工の分離の原則」に則った“仕様発注”に向けて、2年半もの設計委託期間と60億円余りの設計委託費を費やした挙句に、2015年7月に計画全体が白紙撤回されました。つまり、全てをドブに捨てたのも同然です。

 

その最大の原因は、スペック・工事費・工期(互いにトレードオフの関係にあります。)について、「全体最適化」に失敗したことです。“仕様発注”は、設計と施工それぞれの「部分最適化」を求めているのと同じであるため、「全体最適化」には本質的に向いていないのです。

 

【“性能発注”による復活・成功】

 

我が国にとってラッキーだったのは、「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」が2014年6月に改正され、「設計・施工の一括発注」が、つまり、“性能発注”が、法律で裏付けられたことです。ここで例示された「技術提案の審査及び価格等の交渉による方式」を、一言一句違わず踏襲して、“性能発注”による新国立競技場建設計画が復活しました。

 

復活に向けた動きは凄まじく迅速でした。つまり、2015年7月17日の白紙撤回を受けて、同年8月28日には「新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議(第4回)」を開催して「新国立競技場の整備計画」を決定し、これを受けて、同年9月1日には、急遽作成した「新国立競技場整備事業 業務要求水準書」に基づき、受注業者の公募手続きを開始しています。この「業務要求水準書」(外部委託せずに発注者側で1ヶ月余りで作成したものですが、ここにも、“性能発注”の効果・効能が如実に表れています。)に基づき、「技術提案の審査及び価格等の交渉による方式」により、同年暮までに受注業者を選定しています。

 

選定の翌年、つまり、2016年1月から設計に取り掛かり、その翌年、つまり、2017年には施工に着手し、2019年11月30日に、当初予定通り予定の金額内で、新国立競技場は完成しました。デザイン・設計・施工を一括実施させる“性能発注”であるからこそ、スペック・工事費・工期の「全体最適化」に成功した結果です。まさに、“性能発注”による賜物であり大成功であると言えます。

 

さて、我が国の公共工事の発注は、未だに“仕様発注”が大勢を占めていますが、その根幹である「設計・施工の分離の原則」は、実は、どの法律にも根拠を見出すことができません。それどころか、「設計・施工の分離の原則」を言い続けている国は、世界中探しても我が国の他にはありません。“仕様発注”により失敗・破綻した新国立競技場整備事業を、“性能発注”で復活・成功させたこの記念すべき11月30日を契機として、これからの公共工事は“性能発注”に傾注していくべきではないかと思いますが、如何でしょうか。

* 公共工事が全て「仕様発注」となった歴史的経緯 *     

【 戦前 】

戦前は、公共工事は民間企業に発注するのではなく、内務省・鉄道省・農林省が直営で、つまり、官庁内部の技官が詳細設計と詳細積算を行い、資材と人夫を調達して施工管理していました。欧米に留学した優秀な技術者は、官庁にしか居なかったためです。このことから、戦前では、公共工事を担う技術力は、官庁にしか無かったと言えます。

 

【 戦後 】 

戦後は、公共工事の施工を外部に委託するようになり、次いで、設計も外部に委託するようになりました。ここで、興味深いことが起きています。昭和34年1月に、建設事務次官通達「土木事業に係わる設計業務等を委託する場合の契約方式等について」が発出されましたが、この通達で、「原則として設計業務を行う者に施工を行わせてはならない」という「設計・施工の分離の原則」が打ち出されたのです。この原則は、当時としては必須・必然だったと思います。これしか他には方法が無かったと言えます。公共工事を担う技術力は、戦前は官にしかありませんでした。戦後は、民間企業も育ちつつありましたが、やはり、官の技術力は圧倒的でした。そのような状況下で、技術力の乏しい民間に設計・施工一括で発注したらどうなるか。結果は火を見るよりも明らかで、十数年前に大きな社会問題にまでなった「姉歯問題」のような事態が頻発してしまいます。このため、昭和30年代当時は、「設計・施工の分離の原則」を徹底することにより、設計委託の成果物を官が審査し積算も行った上で、設計業者とは別業者に施工を発注することが、つまり、仕様発注が、正に理に適ったものでした。

 

【 現在 】 

しかし、それから半世紀を経る間に、民間の技術力がどんどん向上し、今日では、高度な最先端技術は民間が有しています。つまり、公共工事を担う技術力が、この半世紀の間に、官庁と民間とで完全に逆転してしまっています。としますと、「設計・施工の分離の原則」に則った仕様発注は、今日では、あたかも技術力の低い者が技術力の高い者に向かって「この通りやれ」と指図しているような、とんでもないおこがましい状況になっています。これでは、民間の創意工夫や高度な最先端技術を、上手く活かせないのではないでしょうか。

 

昭和の50年代60年代頃までは、仕様発注で殆ど問題が生じていなかったと思います。この頃までは、明らかに官の技術力が上でしたから。しかし、最近では、仕様発注に起因する問題が頻発しています。新国立競技場建設計画しかり、豊洲新市場建設計画しかり、です。仕様発注が、時代の流れにそぐわなくなった結果だと思います。

* 「性能発注」を全国に普及させるには *     

「性能発注」を全国に普及させる最も効果的な方法は、自治体における性能発注の取り組みを支援・助言して成功に導くことだと思います。

 

PFI法に基づく公設民営・民設民営は別として、公設公営での性能発注の取り組みは、東日本から北日本にかけての自治体では殆ど見られません。東京都下では皆無です。しかし、西日本の自治体では、平成26年の品確法の改正以前から、公設公営での性能発注の取り組みが散見されるところです。

 

例えば、京都市では公設公営の公共建築物(京都会館再整備工事)を、平成24年に性能発注(設計を含めた工期は約3年間)しています。各自治体における業務は、規模の違いこそあれ、内容的には似たり寄ったりのところが多いですから、どこかの自治体での成功事例は、他の自治体でも前例踏襲の形で比較的容易に取り入れることができます。

 

その一例として、公設公営の防災行政無線デジタル化整備事業をご紹介します。平成26年の品確法の改正以前は、全国の当該整備事業は全て仕様発注でした。品確法の改正を受けて、兵庫県丹波市は、本文わずか14ページの「防災行政無線デジタル化整備事業 仕様書 平成27年12月」を作成して、当該整備事業を公募型プロポーザル方式で性能発注(設計及び製造を含めた工期は約3年間)しています。これ以降、全国の防災行政無線デジタル化整備事業は、兵庫県丹波市をモデルとした性能発注により行われるようになっています。

 

このように、どこかの自治体での成功事例は、他の自治体でも前例踏襲の形で比較的容易に取り入れることができますので、性能発注を全国に広めるには、自治体における性能発注の取り組みを支援・助言して成功に導くことが肝要であると言えます。

* PFIに欠かせない「真の性能発注」 *    

自治体の浄水場や清掃工場の整備・運営は、今日ではPFI法に基づくDBO方式(公設民営)やBTO方式(民設民営)が主流です。公設民営にせよ民設民営にせよ、施設の設計・製造・施工・運営が一括発注となりますので、「性能発注」が欠かせないところです。ところが、ここでの「性能発注」に用いられた「業務要求水準書」を多数入手して詳細に分析したところ、受注者に委ねるべき「設計」に立ち入ってしまったケースばかりが目に付きました。このようなケースでは、総合評価方式一般競争入札を実施しても、一社(一者)応札に終わってしまう場合が多く見受けられました。「設計」に立ち入ってしまった結果です。これでは、PFI法の主眼である「Value for Moneyの最大化」、つまり、「費用対効果の最大化」は、実現できる筈もありません。一社応札では、価格と技術の両面で競争原理が全く働きませんので。

 

ところが、新潟県見附市の青木浄水場とごみ焼却施設は違っていました。いずれも、他と同じく、PFI法に基づくDBO方式ですが、いずれも、「業務要求水準書」では「設計」に立ち入ることなく、受注業者が設計・製造・施工する上で必要十分な「実現を求める機能要件・性能要件」を、わかりやすく記載したものでした。正にこの点で、見附市の「青木浄水場更新事業 業務要求水準書 平成28年3月」と「新ごみ処理施設整備運営事業 要求水準書 平成28年5月」は、全国のモデルにすべき理想的な「業務要求水準書」であると言えます。

 

また、見附市では、いずれの発注も、総合評価方式一般競争入札ではなく、公募型プロポーザル方式により、複数業者間における価格と技術の両面での競争原理を確実に働かせた「結果」を出しています。公募型プロポーザル方式では、選定委員会を組織して、委員会の場で各社提案し、委員からの質疑に即答しなければなりません。そうなると、本気の業者であれば事前に入念に準備しなければならなくなり、つまり、形ばかりの「サクラ」は直ぐに見抜かれることになりますので、本気の業者間による価格と技術の「横綱相撲」が実現すると言えます。ここのところが、理想的な「業務要求水準書」の作成と併せて、『真の性能発注』の意味するところです。

* 自治体の技術職員と「性能発注」 *     

私は、3年程前から自治体の技術職研修で、性能発注の話をしてきました。しかし、中堅以上で仕様発注のベテランの職員は、今までやってきたことを否定されたように捉えがちで、「性能発注の話など聞きたくない。」とか「性能発注は、国交省から言われたらやる。首長から言われたらやる。」が、本音だったように思います。他方、仕様発注に未だ馴染んでいない若手の職員には、性能発注に関心を持つ人が多く、研修終了後に質問をぶつけてくるのは若手職員ばかりでした。

 

官で仕様発注のベテランになったとしても、つまり、CADを用いた施工図面の作成や積算基準に基づく積算に熟達したとしても、官を辞めて民間に出れば使い物にならないと思います。他方、性能発注の極意は、「ニーズとシーズのベストマッチング」ですので、これを行うにはコンサルタント的なセンスが欠かせません。つまり、性能発注のベテランになれば、官を辞めて民間に出ても、コンサルタントとしてやっていけますし、官においても、「首長の右腕的存在」になれるように思います。何故ならば、「ニーズとシーズのベストマッチング」とは、早い話が、現場における課題・問題(これがニーズです。)を掴んで、最適な技術・方法(これがシーズです。)を選んで、最も効果的な解決策を企画・立案(これがベストマッチングです。)することですから。

* CM方式とECI方式について *    

始めに、CM(Construction Management) 方式についてですが、欧米では、Construction Management を性能発注でやるから効果的です。しかし、我が国では、土木・建築分野のConstruction Management会社が10年ほど前から仕様発注の中で育ってきているため、Construction Managementを仕様発注で行っています。このため、我が国ではCM方式を採用したとしても、これまでの仕様発注が抱える問題点を全て引きずってしまう恐れがあります。

 

次に、ECI(Early Contractor Involvement)方式についてですが、「設計・施工の分離の原則」に則った当初の新国立競技場建設計画は、平成27年7月に安倍首相が白紙撤回しましたが、実は、その半年前に ECI 方式を導入しています。その結果、よりひどい状況となったために、建設計画全体が白紙撤回です。 ECI方式は、設計・施工の分離発注を前提としていますが、設計段階で施工業者のノウハウを設計に反映させようとするものです。具体的には、設計を発注した後に施工予定業者を決めて、設計業務に施工予定業者を協力させるものです。これには、発注者に相当な負荷がかかり、また、発注者に技術力や調整力が無ければ上手くいくとは思えません。結果として、新国立競技場の工事費が2100億円から3100億円に跳ね上がったので、安倍首相が白紙撤回しました。つまり、建設計画破綻の最大の要因は、ECI方式の採用にあると言えます。    

*「性能発注」はオープンイノベーションに必須

 

オープンイノベーションとは、研究開発・設計・製造に最適なベンダーを、性能発注で広く募るものです。 ITのように技術革新が激烈な分野では、自社内で研究開発・設計・製造していたのでは、激烈な技術革新の世界的な潮流に到底ついて行けません。そこで、欧米ではオープンイノベーションの手法で、つまり、性能発注で、世界中から最適なベンダーを募ります。この方法が、最もコストパフォーマンスが高いと思います。ところが、我が国では、オープンイノベーションを公言する大手メーカーであっても、たまたま見つけた外部ベンダーと手を組む程度のことをオープンイノベーションと称しています。欧米のオープンイノベーションとは全く「次元が違う」話です。

 

我が国がIT分野等で欧米に後れを取るようになり、国力の差を付けられつつある最大の原因は、欧米流のオープンイノベーションが上手くできないところにあるように思います。深掘りすれば、性能発注に国中が良く馴染んでいないことに辿り着くと思います。発注を「仕様発注」と「性能発注」に色分けして区別しているのは我が国だけでして、欧米では、発注とは即ち「性能発注」ですので。