「資材価格の高騰や、働き方改革関連法に基づく労働時間の制約」といった

新たなリスク要因への対応  

 2023年10月28日、NPO法人 建設技術監査センターのプロポーザルデザインビルド研究会(会長は澤田雅之)の初回会合を開催しました。
 この席上、私から【 資材価格の高騰、働き方改革関連法に基づく労働時間の制約 〜 新たなリスク要因へのプロポーザルデザインビルドによる対応に向けて 】と題する講演を行いました。
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NPO法人建設技術監査センター プロポーザルデザインビルド研究会

発足にあたっての会長挨拶

 

 昨年来、官公庁の建築プロジェクトでは、受注事業者が選定できない事態、つまり、発注に失敗した事例が相次いでいます。例えば、大阪・関西万博政府出展パビリオン「日本館」では、設計・施工分離発注方式による総合評価一般競争入札が今年5月に不成立となり、八千代市の新庁舎整備事業では、実施設計付き施工発注方式による総合評価一般競争入札が今年9月に中止され、大阪府岸和田市の新庁舎整備事業では、設計・施工一括発注方式による公募型プロポーザルが今年10月に中止されています。

 

 共通する失敗原因は、「資材価格の高騰や、働き方改革関連法に基づく労働時間の制約」といった、建設事業者に大問題となっている新たなリスク要因に対して、発注者側としての適切な対処ができていなかったことです。具体的には、これまでどおりの考え方や取り組み方で策定した予定価格(公募型プロポーザルの場合は提案上限価格)では、「資材価格の高騰や、働き方改革関連法に基づく労働時間の制約」といったリスク要因によるコスト上昇を反映することができていなかったため、そのような予定価格の制限下では、受注を希望する建設事業者は誰もいなかったということです。

 

 それゆえ、上記の問題を抜本的に解決するには、「これまでどおりの考え方や取り組み方」を改めていく必要があります。これには、発注を確実に成功させることができる「これからの考え方や取り組み方」を、実際の成功事例に基づいて具体的に示していくことが合理的であり効果的です。

 

 このような「実際の成功事例」として、当NPOが平成23年に実施した「山武市しらはたこども園整備事業」が挙げられます。プロポーザルデザインビルド方式(公共工事の品質確保の促進に関する法律の第18条に規定された「技術提案の審査及び価格等の交渉による方式」と同義の方式)により、簡潔明瞭かつ必要十分に要求要件を記載した要求水準書(A4版7頁)を当NPOが作成して、公募型プロポーザルにより価格と技術の両面での競争原理を働かせて受注事業者を選定することができました。

 

 このようなノウハウを有するのは、我が国では当NPOだけです。それゆえ、全国的に問題を生じている「資材価格の高騰や、働き方改革関連法に基づく労働時間の制約」といったリスク要因に対して、発注者側として的確に対処していくことができるよう、このようなノウハウを当NPOが発注者側に伝授していくことが求められており、喫緊の課題であると言えます。

 

 

講演資料は、下記のクリックでご覧頂けます。

 

プロポーザルデザインビルド研究会発足を報ずる日刊建設新聞(令和5年11月1日付)と、千葉県下全自治体首長への送り状は、下記のクリックでご覧頂けます。