顔識別技術と監視カメラのコーディネイト

情報通信分野の発注者エンジニアリング

 

技術士(電気電子部門)

の澤田雅之です。

**部分最適化から全体最適化へ**

〜大規模技術プロジェクトを破綻させない鍵〜

 我が国ではこれまで、優れたシステムを実現する方法論として、『システムを構成する各部分ごとに最適化を図れば、最適化された各部分を纏め上げた全体が最適化される。』とする考え方が主流であったように思います。

 

 技術革新が緩やかに進む中で、既に確立された技術を用いてシステムを構成する場合には、部分最適化の積み上げが確かに全体最適化に繋がっていました。既に確立された技術は規格化や標準化がなされていることが多いので、システムを構成する各部分ごとの最適化が容易であり、また、各部分を他の部分とベストマッチングさせて全体を最適化することも難しくはないからです。

 

 しかし、技術革新が急激に進む中で、最先端技術を用いてシステムを構成する場合には、このようなボトムアップでは全体最適化には繋がりません。最先端技術は規格化や標準化がなされていないことが多いので、システムを構成する各部分ごとに最適化ができたとしても、各部分を他の部分とベストマッチングさせることが容易ではないからです。そこで、実現したいシステムの目的を見据えたトップダウンにより、全体最適化を図ることが極めて重要となってきます。

 

 ボトムアップからトップダウンへの変革は、システムの実現を目指すプロジェクトの運営体制を抜本的に見直すことが大前提となります。ボトムアップでは、プロジェクトを構成する各グループごとに最善を尽くすことが求められます。この場合には、グループを率いる各リーダーは、プロジェクトの責任を互いに分かち合う立場であり、各々の専門分野の技術力に加えて、グループとしての結果を出すための統率・指導力及び折衝・調整力が欠かせません。一方、トップダウンでは、プロジェクトの成否は偏にプロジェクトリーダーの手腕に掛かってきます。この場合には、プロジェクトリーダーは、プロジェクトの最終責任を一身に負う立場となるため、システムの全般に関する技術力に加えて、優れた企画力、折衝・調整力及び統率・指導力が求められます。

 トップダウンでプロジェクトを運営することは、欧米では通例となっていますが、我が国では、戦前の軍用機開発プロジェクトが典型的なトップダウンでした。例えば、零戦については、三菱重工の堀越二郎技師が設計主務者として、零戦開発プロジェクトを率いました。零戦の成功は、堀越二郎技師の卓越した技術力、企画力、折衝・調整力及び統率・指導力の賜物であったと言えます。

 

 昨年来、新国立競技場の建設問題や、線天文衛星「ひとみ」が軌道上で空中分解した問題など、大規模な技術プロジェクトの破綻が続発していますが、いずれも発注者のエンジニアリングの視点で捉えてみますと、根源には共通する問題点(全体最適化のコンセプトではなく部分最適化のコンセプトを追求したことです。)が浮かんできます。例えば、新国立競技場では、プロジェクトをデザイン設計・建築設計・建築施工の三段階に分割して、各段階ごとに競争原理を働かせようとする部分最適化を追求していたと捉えることができます。また、線天文衛星「ひとみ」では、トップダウンにより全体最適化を図るプロジェクトリーダーが実質的に不在となる中で、受注企業三社を取り込んだ形でプロジェクトを運営していたため、各社それぞれが責任を持ってそれぞれの最善を尽くそうとする部分最適化を追求していたと捉えることができます。

 

 このことから、全体最適化のコンセプトを追求することは、これからの我が国における大規模な技術プロジェクトを成功に導く上での必須条件であると言えます。また、全体最適化のコンセプトを機能させるには、プロジェクトリーダーが最終責任を全うできるよう、強力な権限の付与を必要としますので、この点について、プロジェクト構成員の意識改革を徹底することも必須条件であると言えます。

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☆  ドローンテロへの対策  ☆☆

 重要警戒エリアの遥か彼方から

精密に無線誘導されて飛来した

大型のドローンが

夜の闇に紛れて

要所・要人目掛けて突入・・・

これは正に、警備実施上の悪夢です。

しかし、近年の無線技術の進歩発展は

ドローンの脅威を著しく増大し

このような悪夢が現実化しています。

 

また、空の産業革命を担うドローンは

手足の代わりに羽根が生えた

空飛ぶロボットです。

電波妨害で操縦不能に陥れても

墜落しません。

ドローンテロ対策が難しい所以です。

* 9月12日にドローンセミナー(6時間)を開催 *

ドローンの飛行原理とドローンテロ対策

空飛ぶロボットへの進化と

セキュリティなドローン社会の実現

 

この度、下記のドローンセミナーを開催する運びとなりました。本セミナーの開催については、警察庁警備局警備運用部警備第一課に連絡済みです。

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《情報機構主催講習会》

•テーマ ドローンの飛行原理とドローンテロ対策

      空飛ぶロボットへの進化とセキュリティな

      ドローン社会の実現

•講 師 澤田雅之技術士事務所所長 澤田雅之

•日 時 2019年9月12日(木) 10:30〜16:30

•会 場 [東京・船堀]タワーホール船堀4階402会議室

  詳細・申込は、次のURLへどうぞ

 

*  テロ敢行手段としてのドローンの脅威と対処方策  *

警察政策学会の年刊誌「警察政策」第20巻(2018)に掲載された、約2万字の論説です。

 

 2018年平昌冬季オリンピックでは、ドローンによるテロ攻撃に備えて、競技会場周辺におけるドローンの飛行を禁止するとともに、警察のテロ対策部隊にドローン警備隊を組織し、ドローン捕獲ドローン、携帯型ジャマー、ショットガンを配備しました。

  2019年のG20サミットやラグビーW杯、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、本論説が我が国のドローン対策の一助となれば幸甚です。

 

下記は、論説の全文と講演資料です。

                                              

  ***「みちびき」が拓く未来

     〜 ドローンテロ対策の視点から ***

「SPACシンポジウム2018」に

 講師として登壇しました。 

 

 一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)が、11月16日に東京お台場の日本科学未来館で開催した「SPACシンポジウム2018」に、講師として登壇しました。私の講演テーマは、【「みちびき」が拓く未来 〜 ドローンテロ対策の視点から】です。

 ドローンは、準天頂衛星システム「みちびき」の本格稼働(2018年11月)や、IOT基盤としての5Gの実現(2020年頃)などの無線技術の進歩発展に支えられて、小型無人機としての「空の産業革命」や、有人機としての「空の移動革命」に向けて、急速に進化していきます。

  そこで講演では、このようなドローンによるテロ攻撃の脅威の増大と、そのような脅威への対処方策について、わかりやすく解説しました。下記は、講演資料です。

             

* ドローンでわかる電気自動車・自動運転車・空飛ぶ車 *

月刊「技術士」6月号(2018年)

に掲載された解説記事です。 

 

 リチウムポリマー電池でモーターを駆動して飛行するドローンは、リチウムイオン電池でモーターを駆動して走行する電気自動車と同じく、CO2を排出しませんが航続距離は短いです。また、搭載したセンサーデータをフライトコントローラーで処理することにより各モーターの回転数を最適制御するドローンは、自動運転車と同じく、操縦のアシストや、完全自律航行ができます。さらに、ドローンが進化し大型化すれば、人が搭乗できる空飛ぶ車となります。

 そこで、ドローンの飛行制御の仕組みを踏まえて、電気自動車・自動運転車・空飛ぶ車それぞれの仕組みや特徴、今後の動向について解説しました。下記は、解説記事全文と講演資料です。

                            

** 明日の社会(Society5.0)にかける夢 **

〜 ドローン・電気自動車・自動運転車・空飛ぶクルマ 〜

 明日の社会( Society5.0、つまり、超スマート社会 )は、弱者に優しい社会です。

 準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位や、AI、IOT、5Gに支えられ、ドローンが進化した「空飛ぶロボット」や「空飛ぶクルマ」、あるいは、完全自動運転車などが、高齢者、身体障害者、過疎地に住む人々の手足となって助けてくれます。

          

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☆☆☆   顔画像識別技術 ☆☆☆

我が国の顔画像識別技術は、世界一です。

その識別精度と識別速度は

「人の目」を遥かに凌駕しています。

顔の表情や経年変化、整形手術や変装など

「人の目」には全く別人に映ったとしても

顔画像識別技術では看破できます。

 

 監視カメラのライブ映像から

テロリストを発見したり

防犯カメラの録画映像から

犯人の身元を割り出したり。

夢のような話ですが

顔画像識別技術は既に実用の域なのです。

 

 問題は

監視カメラや防犯カメラの映像品質です。

顔画像識別技術の性能を存分に引き出すには

顔画像識別技術の特性にマッチした

撮影システムの構築が欠かせないのです。

  顔画像識別技術に関する特許を取得しました。*

 発明の名称】   

同一人物映像に対する顔画像間欠切出し

制御機構を用いたターゲット発見システム

 

監視カメラが捉えたライブ映像の中からテロリストや指名手配犯の顔を自動的かつリアルタイムに発見するターゲット発見システムにおいて、リアルタイム性を損なうことなく、他人誤認率を極めて低く抑えた上で本人発見率を高める仕組みを発明しました。

 詳細は、特許公報(以下のURL)をご覧下さい。

  http://www.conceptsengine.com/patent/grant/0006376403

 

下記は、本発明の意義や効能などを説明する講演資料です。

       

*  顔の識別における機械の目の特性と人の目の特性  *

      〜 犯罪捜査やテロ対策の視点から 〜

 顔画像識別エンジンを用いた「機械の目」は、識別の精度と速度において「人の目」を遥かに凌駕しています。また、顔の表情や経年変化、整形手術などにより「人の目」には別人の印象を与える場合であっても、「機械の目」は印象の違いに左右されずに識別できるなどの優れた特性があります。このような「機械の目」は、防犯カメラの録画映像に遺留された犯人の身元割り出しや、監視カメラのライブ映像で捉えた指名手配犯やテロリストの発見に、効果的に活用することができます。

 一方、「人の目」は、意識レベルでは顔の際立った特徴や印象を一瞬で捉えることができます。また、無意識レベルでは、思い出せなくても目撃した顔には反応する特性があります。前者の意識レベルの特性は、「目撃者の供述に基づく犯人の似顔絵」として、また、後者の無意識レベルの特性は、「目撃者の被疑者写真閲覧による犯人の割り出し」として、犯罪捜査に活用されています。

                    

**  警察情報通信の発注者エンジニアリング       〜 ターゲット発見システムの実現に向けて  **

警察政策学会の年刊誌「警察政策」第19巻

(2017)に掲載された論説です。

 

 ターゲット発見システムは、顔画像識別技術を活用して、監視カメラのライブ映像の中からテロリストや指名手配犯を即座に発見するシステムです。技術的な困難さから、これまで効果的な実現事例は皆無でしたが、近年の技術革新の進展により、技術的な困難さは既に克服されています。

 このため、費用対効果に優れたシステムの実現に向けて残された課題は、価格と技術の両面での競争原理が確実に働く理想的な発注仕様書を作ることです。発注者ならではの技術的な手腕を発揮して、理想的な発注仕様書を作ること・・・これが『発注者エンジニアリング』です。

                   

**   顔画像識別エンジンと監視カメラが産み出す  

             「機械の目」の特性   **

月刊「技術士」3月号(2016年)に掲載された解説記事です。

 

 我が国の顔画像識別技術は、世界のトップランナーです。その識別精度と識別速度は「人の目」を遥かに凌駕しています。このため、防犯カメラの録画映像からの犯人の身元割り出しや、監視カメラのライブ映像からの指名手配犯の発見は、既に実用の域に達しています。

 ここで問題となるのが、防犯カメラや監視カメラの映像品質です。顔画像識別技術の優れた性能を存分に引き出すには、その技術的な特性に適合した撮影システムの構築が欠かせません。そこで、顔画像識別技術の性能や特性、満たすべき映像品質について、具体例に基づき解説しました。

        

*   顔画像識別における人の目の特性と機械の目の特性   *

警察政策学会の年刊誌「警察政策」

第17巻 (2015)に掲載された論説です。

 

 顔画像識別エンジンを用いた「機械の目」は、識別の精度と速度において「人の目」を遥かに凌駕しています。また、顔の表情や経年変化、整形手術などにより「人の目」には別人の印象を与える場合であっても、「機械の目」は印象の違いに左右されずに識別できるなどの優れた特性があります。

 一方、「人の目」は、意識レベルでは顔の際立った特徴や印象を一瞬で捉えることができます。また、無意識レベルでは、思い出せなくても目撃した顔には反応する特性があります。

 そこで、「人の目の特性」と「機械の目の特性」をわかりやすく解説することにより、顔画像識別技術の犯罪捜査への効果的活用方策を提言しました。

               

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☆☆   発注者のエンジニアリング  ☆☆

発注者のエンジニアリングとは

費用対効果に優れた調達の実現に向けて

発注者ならではの

技術的な手腕を発揮することです。

その要諦は

価格面だけではなく技術面においても

競争原理を確実に働かせることです。

この鍵を握るのは

ニーズとシーズをベストマッチングする

理想的な「性能仕様書」の作成です。

ニーズとは

発注者が実現を求める機能と性能です。

シーズとは

受注者が持つ設計と製造のノウハウです。

理想的な「性能仕様書」を作成すれば

工事や製造請負などの発注業務は

あらゆる点で劇的に改善します。

それ故

「性能仕様書」が我が国で

幅広く速やかに普及することが望まれます。

 

 

*  公共工事の談合〜特効薬は「発注者のエンジニアリング *

 ***   消防無線談合事案詳細分析に基づく提言   ***

 官公庁発注に係る直近の大きな談合事案である「消防無線談合」の手口を詳細に分析しました。手口そのものは、詳細な施工図面から成る「工事仕様書」の記述内容を巧みに悪用している点で、特に目新しいものではありません。しかし、発注者である全国の各自治体では、外部委託で作成した「工事仕様書」にこのような談合手口が潜んでいようとは、どこも全く気付きませんでした。また、消防無線談合を教訓として、発注方法を見直そうとした自治体も、全くありませんでした。これでは、全国の自治体に「談合の餌食になり易い発注体質」が温存されたままです。この先も、詳細な施工図面から成る「工事仕様書」による、従前通りの公共工事の発注が全国的に継続する趨勢ですが、このままでは、同様手口による談合が分野を替えて繰り返されることでしょう。

 そこで、なかなか払拭できない「公共工事の談合」に対して、価格と技術の両面での競争原理を確実に働かせる方法などの、真に実効性のある「発注者のエンジニアリング」のツボを押さえたコンサルティングにより、官公庁を「談合の餌食になり難い発注体質」に劇的に改善できることをお話し致します。

                     

***「性能仕様書」による発注の劇的改善

          【製造請負発注編】  ***

 「性能仕様書」とは、発注者が受注者に実現を求める目標そのものを、わかりやすい文言で規定した仕様書です。研究開発及び詳細設計を含めた製造請負の発注や、いわゆるオープンイノベーションには、適切に作成された「性能仕様書」が欠かせません。理想的な「性能仕様書」は、イノベーションを促進できます。費用対効果を最大化できます。談合の温床を払拭できます。このため、特に我が国の官公庁における製造請負発注に、「性能仕様書」が広く普及することが何よりも望まれます。

                     

**「性能仕様書」による発注業務の劇的改善

           【公共工事発注編】  **

 「性能仕様書」とは、発注者が受注者に実現を求める目標そのものを、わかりやすい文言で規定した仕様書です。PFIやPPPによる設計・施工一括発注には、適切に作成された「性能仕様書」が欠かせません。設計・施工分離発注方式による当初の新国立競技場整備計画は破綻し、白紙撤回されましたが、直ちに「性能仕様書」による設計・施工一括発注方式に切り替えた結果、新たな整備計画は特段の支障もなく遂行されています。理想的な「性能仕様書」は、イノベーションを促進できます。費用対効果を最大化できます。談合の温床を払拭できます。このため、特に我が国の公共工事発注に、「性能仕様書」が広く普及することが何よりも望まれます。

                     

 **   X線天文衛星「ひとみ」の失敗は

   「発注者のエンジニアリング」の失敗   **

 X線天文衛星「ひとみ」は、米国航空宇宙局や欧州宇宙機関等も参加した一大国際プロジェクトでした。平成28年2月17日の打ち上げに成功しましたが、3月26日、観測機器の試験運用中に、衛星の姿勢測定系のバグによりゆっくりと回転を始め、次いで、姿勢変更系のデータ入力ミスにより回転を猛烈に加速したため、遠心力で「ひとみ」は空中分解し、失われました。一大国際プロジェクトは、大成功を目前にして水泡と化したのです。

 原因を深堀りしてみますと、適切な発注者エンジニアリングの欠如(衛星メーカーに実現を求める機能要件と性能要件を、性能仕様書として的確にまとめ上げて発注することができなかった。)による全体最適化の失敗が、根本かつ最大の原因であったと思います。

 そこで、「ひとみ」が空中分解した直接的な原因や背景要因を分析することにより、発注者エンジニアリングの視点から、大規模な技術プロジェクトを破綻させないための要諦を具体的に解説しました。

                                 

**   大失敗に学ぶ「発注者のエンジニアリング」

  〜 新国立競技場建設計画の白紙撤回とその後   **

 国際デザインコンクールで選定した斬新なデザインの新国立競技場を建設するプロジェクトは、2年余りの紆余曲折の末に、平成27年7月に計画全体が白紙撤回され破綻しました。

 直接的な原因は、スペックと工事費と工期(互いにトレードオフの関係にあります)について、全体最適化に失敗したことです。設計・施工分離発注方式が、この全体最適化をより難しくしました。また、トップダウンのリーダシップが不在であれば、プロジェクトは、部分最適化の積み上げに陥らざるを得なくなります。

 このことは、白紙撤回後、速やかに作成した「性能仕様書」に基づく、設計・施工一括発注方式による新たな建設計画が、特段の滞りもなく遂行されていることからも明らかです。

 そこで、白紙撤回された建設計画とその後の建設計画を分析することにより、大規模プロジェクトの全体最適化には、「性能仕様書」に基づく設計・施工一括発注方式が効果的であることをわかりやすく解説しました。

                    

『零戦』をモデル事例として、『オープンイノベーションを成功させる発注者のエンジニアリング』の要点をご説明する動画です。

Posted by 澤田雅之技術士事務所 on 2016年2月17日

 ***  ニーズとシーズを

                    ベストにマッチング  ***

 〜 オープンイノベーションを成功させる鍵 〜

 発注者のエンジニアリングとは、耳慣れない言葉だと思いますが、技術革新が著しい分野でオープンイノベーションにより優れた特注品を創り出したいときに、目覚ましい効果が期待できる手法です。

 

 これまでに無い画期的な特注品を創り出そうとすれば、発注者側のニーズとベンダー側のシーズをベストマッチングさせなければなりません。ここでのニーズとは、発注者が特注品に求めたい機能と性能です。また、ここでのシーズとは、ベンダーが保有している詳細設計と製造のノウハウです。

 

 しかし、ベンダーにはそれぞれ得手と不得手がありますし、技術革新が急激に進む中では、得手と不得手が短期間に入れ替わることも稀ではありません。このような状況下であればこそ、発注者のエンジニアリングを適切に行って、求めたい特注品の設計と製造に最適なベンダーを見つけ出す必要があります。

 

 この手法の鍵を握っているのは、発注仕様書です。技術革新が緩やかに進む分野では、これまでの発注経験を活かして発注者が詳細設計を行い、それを発注仕様書としてまとめるのは難しくはないと思います。ところが、技術革新が急激に進む分野では話が全く違ってきます。発注者が詳細設計を行うには、最新技術の動向調査から始めなければならないからです。しかし、これは決して容易なことではありません。そこで登場するのが、オープンイノベーションです。し烈な技術革新の成果を速やかに存分に享受したいのであれば、研究開発も含めた詳細設計を広く外部に求めるオープンイノベーションが非常に効果的です。

 

 オープンイノベーションの発注仕様書では、詳細設計は致しません。その代わりに、発注者が特注品に求めたい機能要件と性能要件について、ベンダーが詳細設計を行うために欠かせない情報を、分かりやすく発注仕様書に記載します。ここで、性能要件は具体的な数値で示す必要があります。この数値目標の達成に向けて、ベンダーは特注品の詳細設計を行います。このため、性能要件間のトレードオフ関係を十分に検討して、達成が容易ではないけれども決して不可能ではないぎりぎりの数値を設定することが、理想的な発注仕様書を作成するための要諦となります。

 

 理想的な発注仕様書では、価格と技術の両面での競争原理が働くようになります。このような発注仕様書を提示してベンダーを広く募れば、発注者は、求めたい特注品の設計と製造に最適なベンダーを容易に見つけ出せることでしょう。

 まとめますと、発注者のエンジニアリングとは、技術革新が著しい分野でオープンイノベーションにより優れた特注品を創り出すために、価格と技術の両面での競争原理が確実に働く理想的な発注仕様書を作成することだと言えます。ここで大事なポイントは、次の三点です。

 

 一つ目は、ベンダーが詳細設計を行うために欠かせない機能要件及び性能要件を、漏れ無く発注仕様書にリストアップすることです。この際に、性能要件間のトレードオフ関係について十分に検討して、実現が決して不可能ではないように要件定義をしなければなりません。

 

 二つ目ですが、発注仕様書では、ベンダーに委ねる詳細設計には踏み込まないことです。踏み込んでしまいますと、ベンダーが行う詳細設計の自由度を狭めてしまいますし、性能要件の達成責任の所在が曖昧となる恐れが生じます。

 

 三つ目は、発注仕様書の作成に先立って、概要設計書を作成して発注者側の意志統一を図ることです。概要設計書には、解決しようとする課題、技術的な課題解決方策の概要、課題解決により期待される効果、の三点を分かり易い文章で記載することが大事です。

 

 ところで、既にお気付きのことと思いますが、理想的な発注仕様書を作成するには、発注者ならではの目利き力が欠かせません。この目利き力を具体的に申しますと、最新技術で解決できる現場の課題を見極める力と、課題解決により期待される効果を的確に予見する力です。このような力量の発揮が、発注者のエンジニアリングを成功に導きます。

 

 発注者ならではの目利き力は、発注者エンジニアリング力と言い換えることもできますが、これは、ベンダーが保有する詳細設計と製造のための技術力とは全く次元が異なるものです。ところが、我が国ではこれまで、発注者エンジニアリング力の意義や重要性、涵養と発揮の仕方について、全くと言って良いほどに注意を払ってきませんでした。

 

 しかし、情報通信分野などの技術革新は、益々激しさを増しているところです。これからは、我が国のベンダー企業群が産み出す優れた技術的成果を、オープンイノベーションにより速やかに存分に享受できた者が勝ち組となることでしょう。発注者エンジニアリング力の涵養と発揮が、ビジネスにおける勝敗の鍵を握る時代となりつつあります。

 


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所長の略歴
昭和287月生
昭和533月 京都大学()工学研究科修士課程修了
昭和534月 警察庁入庁。以来35年間、警察の情報通信部門で技術者として勤務し、顔識別技
      術の警察活動への応用に向けた調査・研究や、警察の各種情報通信システム整備に
      伴う発注者エンジニアリング業務(概要設計書や技術仕様書の作成)に従事。
平成253月 警察情報通信研究センター所長を最後に、警察庁を退職。
平成257月 ()セキュリティ工学研究所に入社。以来2年間、警察やメーカー、警備保障会社
      などへの、顔識別技術に関するコンサルティング業務及び発注者エンジニアリング
      業務(概要設計書や技術仕様書の作成)に従事。
平成273月 技術士事務所を開業